犬がいるんです、柴犬の。
毎朝なでる、それだけの関係、顔も知らない他人の飼い犬。小麦色のすこし硬い毛並、頬の毛は縮れて今や二本ほどしかなく、少々間抜けな印象を与えます。撫でると大きな黒目を細めるところが愛らしいのです。たまに見せてくれるお腹はすこし暖かくて、特別な気持ちになります。他のひとにお腹を見せている時は、当たり前なのですが、なんだか少し悲しくなりましたね。
今朝も、頭を撫でました。犬は少しだけすり寄り、あとは首をかいていました。頭の毛も硬くて、でもチクチクとした痛みはなく、なんだか柔らかくて、心地よかったのを覚えています。数分撫でたあと、大学へ向かうために、またねと言って離れました。毎日のことなのに少し寂しくて、何度も振り返ってしまいました。今日は目が、合いました。犬はこちらを見て、大きく吠えました。次に小さく、ねだるように聞こえました。ただ、お腹が空いてたいただけかもしれません。
角を曲がって最後の鳴き声を振り切った時、目頭が熱くなって一筋の涙が流れました。何のための涙なのか、わかりません。意味なんてないかもしれません。他人の犬なのですから、他人の犬なのですから。
顔も知らない他人の犬と希薄な関係、そして涙が、澄んだ空気に溶けていった。
0 件のコメント:
コメントを投稿